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眠るための夜ではない

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2015.12.11 Fri

あなたのめくるページをそっと真似してみる
今にも解けそうに指先にまとわりついた活字
風がどこまでも吹き抜けていく
空を追い抜いて
太陽を追い抜いて

浅瀬の底に反射した光が
きらきらと白い足首を照らす
ビー玉もニンジンも
この水に触れたものは全て妖精になってしまう
そういう素敵な嘘をあなたはつく
(どこか悲しいけれど)

窓を建てましょう
ふいに木の下で小熊が二人に提案した
向こうに広がるおにぎりみたいな形の山と
まるで遠近の掴めない海
馴れない手つきで釘を打ち込む
痩せた木枠を森にもたせかけ
小瓶に入れた菜の花と
ストライプのカーテンを飾る
裏で耳をそばだてていた兎が集まって
ちょっとした窓辺ができあがる
やかんにお湯が沸いている
景気の良い音がして
びっくりした鳥たちが慌てふためいている

「ふたりの生活」に必要なもの
秒針のない時計と、文字の大きな新聞
よく目立つ赤い郵便受けと、食卓
窓辺を取り巻く しあわせふしあわせ
ほんの少しの登場人物
経年劣化

けれど優しい嘘は絵になる
と、嘯いたのは賢い狐
まだまだ森の緑が青く茂っていた頃
私とあなたは同じ歌が好きだった
狐は悪気があった訳じゃなかった
台無しになったアップルパイに
無邪気な蟻たちが群がる
扉のないこの家に
客人は絶えない

本のページをめくるあなたの
物憂げな仕草に夢中で
今更に、あなたは何を読んでいたのだっけ
錆び付いた釘が抜けて
窓はただの木片に代わる
ほつれたところから景色が混ざり合う
枠を失った森はただ雑然として
屋根のないここが家でも何でもないと想い出させる
あるときとつぜん

風がまた吹き抜ける
指先の代わりにページをめくって
唇の代わりにあなたの頬にキスをする
太陽に焼かれて黄金色に焼けた紙面の端
いつの間にか少し年を取ったみたい
ここには鏡がないから そんなこと誰も気づかないわ
12回目の誕生日に分厚い栞を贈る
かさついた指先を
少ししめらせる子供じみた仕草が懐かしい

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