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眠るための夜ではない

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2016.10.30 Sun

母の胎の中で私は死んでしまったのに
気づかぬまま母は私を産んだ

産毛のように肌をなでさする風も
触れられるかと見まごうような雲も
私の死んだ命の前をただ通り過ぎていく
しわがれた手のひらを閉じては開いて
私を探す八つのまなこ
そのどれも私の透けた体を通り過ぎていく

夜が来ればカメレオンのように
影に溶け込んでねむり
朝がくれば哀れな土竜のように
地中深く潜ってとぐろをまく
鮮やかな夏も侘しい秋も
私の濁った目にうやうやしく会釈しては去っていく

まぼろしはまぼろしのもとへ
思い出は思い出のもとへ
あらゆる哀れな生き物をすくいあげる
ありもしない手のひらの中へ
雨のように月のように
海のように虫けらのように

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