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眠るための夜ではない

日々綴った詩を更新してます。

2018.12.21 Fri

横たわった巨大な街の
脊髄のように伸びていく高架道路
しみったれた骨組み
そのしずかなあたたかみ

忍び寄る季節は死のごとく
誰にも平等で
そのくせこの寒さに耐えることを僕らは学べない
連れ合いは謎の哲学をふるう

肉の剥がれた骨を思わせる
そびえ立つ工事現場から漂う
なにかしら 機械的なものの香り
汗と油と火花

初潮の戸惑いとはほど遠い
洗練された街灯の側で
ふいにわたしの足を止めるものはなんであろうか
二人の人間の指紋
驚くべき類似と相違
突起と亀裂

東京の真ん中に突如現れた
そこは巨大な裂け目だった
吸い込まれていくコンクリートの赤ん坊の
ガラスでてきた瞼
鉛色の眼球
迸るモスキート音で彼は鳴いた

押し流される私たちははたして
生まれ損なった精子 卵子だったろうか
看板を剥がれたポスターが空を埋め尽くす
この奇怪な景色の中で

2018.12.21 Fri

血走った赤メガネ
暖冬に暑苦しいダッフルコート
嫌味な自転車の巻き起こした風が
塾帰りの子供達をひっくり返す

そこにあることすら忘れられたような
錆びついた鉄でできている
日焼けしたカーテンの染みにも似た
老婆の顔が耳鳴りする

流行りの黒のバックパックが
波のように流れてゆくのを見ながら
つぶやきはともし火に
ともし火は業火になって
春の来る前に種を燃やしてしまうだろう

生まれなかった命を慮る気概もない
この街の片隅で

2018.12.21 Fri

秋晴れの天を仰ぐように
あなたは手を伸ばす
そびえ立つ高層ビルも
走り去るパトカーもタクシーも
つられて吸い込まれていくよう

毛細血管のような指先に
かろうじてしがみついた葉先を
また ちいさな毛細血管が走る
祈り あるいは降伏
そんないさぎのよさを
迸らせながら

一向に応える気のなさそうな
かれらでさえも
こころなしか
美しいものに見えてくる

2018.12.21 Fri

無数のガラスに反射する
秋晴れの空に浮かんでいる
あのおのおのの顔

観葉植物の揺れるベランダに
しなびた烏が干されてる
上空の風に揺れて
ソファに落ちた影が飛び跳ねる

誤って届けられた
茶封筒の手紙があった
誤って住み込んだ
知らない赤ちゃんがいた
そんなものたちの寄せ集めで
その角部屋はできていた

お茶を淹れましょう
しわがれた声で言う
皮膚の上にあますところなく皺の刻まれた
その人が男なのか女なのかもわからない

そうしましょう 頷いてわたしは出かける
駅についてもまだ
その懐かしい湯気に包まれたまま

2018.12.20 Thu

コンクリートに押し付けた煙草
目の覚めるような火花が散る
新宿からの帰り道

ほんとうのわたし
などという幻よりも
今はただ 湯気のたったシチューを
ほんとうのあなた
などという奢りよりも
今はただ かさついた唇の感触を

肉だけが知っていることがある
表面も裏側もないほど深く 潜って
眼球は臓器の夢を見る
湿った掌の中で

知ったかぶりの瞼
人差し指で撫でる
らしくもない ピアスの穴の向こう
終電が過ぎ去っていく